2005.12.27…季節が順序を変えても心臓の色は変わらないよ、と

35.心臓

彼女は金色の髪をして 青い目をしていた
いつも石を投げられては 異国の言葉が理解できなかった
彼女が冷たい道を裸足で帰るとき
雪はその家路を消してしまった
夏の強い陽射しの中で 金色の髪は踊った
暑い道を裸足で駆けては 蜃気楼に迷い込んだ

彼女は茶色の髪をして すこし赤みがかった目をしていた
いつも遠巻きにされては 異国の人々を睨みつけた
彼女は 枯れ葉舞う秋の夕暮れ 
大事にしていた首飾りを落とした
暖かい風の中 一斉に芽吹き始めた緑の中で
耳飾りも落としてしまった

彼女は黒髪で 黒い眼差しだった
同じ言葉を操る人々に うまく合わせられずにはじかれた
彼女は一面の菜の花畑の中で耳飾りを見つけた
入道雲の下で華麗に踊る金糸(きんし)を見た
焼き芋の匂いの中で首飾りを拾った
吹雪の中で たどたどしくもしっかりとした足跡を見た

三人は偶然に出会った
茶色い髪をした人が自分の手元を見ているのを見て
彼女は拾ったものを差し出した
相手は口元をほころばせて笑った
そして茶色い髪をした人は自分の靴を金色の髪の子にあげた
青い目が笑った
金色の髪がつないだ二人の手 誰かと共に辿る家路

彼女らの心臓は同じ赤色で 温かかった

BACK-- NEXT-- テキストメニュー-- SolemnAir-home