真新しいコンクリートに
真白い塗装と壁紙
曇りなきガラスに　汚れなき床板
それでもここは廃墟
主が帰らぬならここは廃墟

ボロボロに崩れ落ちる土塀に
剥がれた塗装と壁紙
ひび割れたガラスに　腐りかかった床板
それでもここは宮殿
主が愛し身を寄せるならここは宮殿


主が住まぬ家は寂れ　錆びれ　廃れた居城
けれどそうしてバクテリアが主に成り代わり
そこは何かが住まう場所へと変貌を遂げる

なにものも帰らぬ場所を廃墟と呼ぶなら
この地に息づかぬ場所などなかろう
寂れ　朽ち果て　そうして何かを肥やし
息づかせるための　
なにかが生きるための腐敗

それは廃墟にあらず新居になって主を待つ