2005.07.28…生きものは地の飴だ、と思う。

6.血の雨

大雨の日に赤いセロハンごしに雨を眺めては
まるで血の雨のよう と笑った
世界が全て赤く 流れる雨も赤く

赤い絵の具をバケツいっぱいの水に溶かして
赤い水に笑った
両手をつけてもそれはさらさらで いつまでも固まらずに

事故だったんだ
大切な人の赤い液体を見て 吐き戻した
両手でまだ温かい体に触れて さらさらした赤い液体に触れた
それはやがて固まり始めて 両手が震えた

血の雨が本当に降って 大切な人がいなくなってしまった

セロハンごしに見た雨は どこまでも雨で
赤い絵の具でつくった赤い水は どこまでも色水で
あの日の液体は 確かに命だった

簡単に笑い 血の雨のようだと笑い
血の雨が本当に降る時には 本当の惨劇があることを忘れて笑っていた


もうセロハンごしに見た世界も 赤い色水も笑えない
あの日の赤い液体が怖いくらい美しく儚く尊かったから
もう二度と 血の雨が降らないことを願いセロハンごしに雨を見ないことにした

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