2005.07.05

14.背中の傷跡

ぎぃと引っ掻き蚯蚓(みみず)腫れ

これは名誉の勲章なのであります
敵に背中を向けて生き
主君の元へ帰ることこそが我が武士道であると

主君はそれを由とせぬ

そうして軍勢の主幹を果たした彼は首を刎ねられた

やがて軍勢は弱り主は城を追われた
その背に矢を受け再びこの地へ戻る決意を
己が護るべき者たちへの約束を

そして一人の男を思い出す
ああ確かに名誉の勲章であったのだ
あの蚯蚓腫れは生かしてこそ跡に残るものであった


長い年月を経て国が再興を果たした頃
お殿様の背中に矢の跡残り 蚯蚓腫れ

それはある男の名誉と無念の象徴であると
お殿様は一生涯隠そうとはしなかった

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