2005.07.12…催眠鎮静薬の意…恋人ではなく支えでもなくそれは。

13.ハルシオン

怯え続けて震える身体を抱きしめた
爪が食い込むほど 歯がぎぃっと音を立てるほど

わたしが怖いと感じたもの全てが
この道を背後から追ってきているようで
圧迫感から居竦み振るえ目を閉じた

左手が右腕を 右手が左腕を痣に成るほど握り締めて
なおそれでもくる震えに 恐怖に全霊で立ち竦んだまま威嚇する

「君の怖いと感じるものが僕には解らない
 けれど 君が本気で怯えていることは解る」
そうして背中まで包みきった他の両腕

よっかかってもいいだろか
もう 全身から力を抜いてもいいだろか
安堵だ これは安堵だ 安心感だ
何一つ大丈夫じゃない
わたしを追ってきているものたちは変わらない
ただあなたがいる それだけのこと

昂ぶった神経をなだめる歌声
緊張しきった身体を 柔らかくほぐす両腕
わたしの常備薬にハルシオンを
この優しい人が一生わたしのハルシオンであればいいのにと

あなたとわたし
互いが互いのハルシオンでありながら帰る場所は違うあなたとわたし

昂ぶり緊張した身体は落ち着きを取り戻し
穏やかな空気をまとってあなたの両腕を外す
常備薬がある安心感に酔ってはまた別々に歩きだす

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