2006.11.4---実話、だそうです。情報源は地元新聞(詳細は下に)

81.カタルシス(浄化)

どうしようもないほど複雑な 人情と義理と保身の駆け引き
この横たわる相手にどれほどの暴言を吐いてやろうか
それとも己の首を括るか 相手の首を絞めるか
そんなことばかりを考える己は もう悪魔だ 人ではない

あと少し待てば解放される もう少しの辛抱だ
「私だって」 「おまえのせいだ」飛び交う言語は何も救わず

「それは殺したいでしょう」
その一言にどれだけの涙が溢れ出る
この悪魔のような自分を どれほどまでに受け止めてもらえる
腹黒く どす黒いものが 己を征服しようとする
コンクエスト? いいえいいえこれはレコンキスタ
誰かが自分に向けた真っ黒な切っ先に
己に巣食っていた悪魔の膿が吸い込まれ
毒性を持つ鈴蘭でさえも 白い可愛らしい花を咲かせるならば
これは国土回復運動
己という名の国を起ち 揚げ直す それは他人が手向けたカタルシス

白い切っ先では救われぬほど 複雑で難解な駆け引きの先に
悪魔ようなたった一言で 裏返り真っ白に救われるほどシンプルな感情

人を強く憎み強く憎み どうしようもないほどまでにそれを抑え
そのきつく穢れた裏に どうしようもないほどまでに何かを愛し
その行為に及ばないことを ひたすら願い 己の想いを壊れた塔で受け止める

いつだって誰かを愛しているのだ なれば それほどまでに悲しく憎たらしくなるのだ
報われないすれ違いに祝福を
そしてこの重たく汚くどうしようもないほどの怨嗟という悪魔を抱えていても
優しく抱きとめてくれる 同じ悪魔を理解する 誰かという存在は
ただもうそれだけで その存在がカタルシス

介護に疲れきった女性に「殺せば?」と記者が言ったら
その一言に大泣きして、「あなただけが私を理解してくれた」というお話を基にしています。
それがいいか悪いかはそれぞれの基準ですが忘れられないエピソードなので、もし自分だったら、と書きました。

BACK-- NEXT-- テキストメニュー-- SolemnAir-home