2007.1.16---雑踏どもは間違いではなくその音たちがという意味合い 無言でいると人形になった気がしてくる

92.ノイズ

駅前
目の前を人が流れていく
私はショーウィンドウ前に飾られたマネキン
ガラスの前に立ちぼうけ

駅前
目の前を大河のように人が流れていく
私は見向きもされないマネキン
その人の流れをぼんやり見つめ 前を雑踏どもが横切る

駅前
川の流れについて行かず 野端に引っかかり流れないごみのように
私はただそのノイズを聴き取る川端のマネキン
彼らはそれぞれの日常を それぞれに呟きながら流れ往く

足音 着信音 拍手喝采 エンジン音 信号音
呼吸音 鼓動 泣き声 笑い声 擦れ合う振動 それらは命音
全てを一つの限られた空間で聴けば それらはノイズ

雑音の中
「すみません」 マネキンは声をかけられる
その瞬間にそれらのノイズは確かな会話となり 雑音は解(ほど)ける
そうして私もまたマネキンから人へと戻り
ノイズをBGMに川に紛れ進み往く人と成る

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