SolemnAir-home//小説…WORDS■2■JACK
■今につながる過去にならない過去

痛みなど、もう忘れてしまった。
悔しさだけが痕となって、未だに俺を苦しめる。
幸せだとか、不幸だとか、普通だとか、異常だとか。
そんなことを考えるのは幸せで普通な奴らに決まってる。

大きな城に俺たちは二人っきりで。
大きな部屋に俺は一人で。
俺はまぬけな番犬どもの下に敷かれた雌犬で。
俺の鳴き声とかを笑う奴だけがあの城の中では普通だった。

俺と同じ日に生まれたシャロは、檻の中で。
あの男のモノだった。畜生でさえないモノ、だった。

聡明なあいつが人間としての言葉を失って
俺のことも解らなくなって
世界を放棄していく様を俺はじっと見ていた。
この手はあいつを助けることもできずに、別の雄犬を抱いてた。

「女」だった頃の俺は、要すればあの男の娼婦で。
いや、金さえもらえない、やはりモノで。
俺は毎晩、あの男が命じた男と寝ることが義務だった。

吐き気が、した。
大きな城に小さな俺たち二人の声は、消された。

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